誰でも冬は、腰が重くなるものです。
風の吹きすさぶ外に出て、何かをするとなるとなおさらです。
一歩踏み出すには、何か動機が必要です。
そんな時にカメラを持つと、私は気合が入ります。
写真を撮りたい気持ちが、被写体となる自然を探します。
それが、自然の世界へ連れて行ってくれることもあるのです。
そういった撮影が重なるにつれて、自然への理解や興味が増していきます。
やがて自然の中に入りたいから、カメラを持って出かけるようになっていきました。
なぜなら自然は、時に直接的に、またある時は回り回って、かけがえの無いものを与えてくれるからです。
自然が好きになり、自然そのものが動機となっていったのです。
外の空気を吸って、風にあたり、太陽の光を浴びる。
それだけなら都会でも体験できますが、美しい自然の中でする体験とは違うのです。
それは大げさに表現された、一つの価値観なのでしょうか。
いにしえの賢人や芸術家達が同じようなことを言うと思うと、狭量な観念でも無いかもしれません。
大田原エリアには、ざぜん草の群生地が2か所あると先に調べていました。
ざぜん草は、水のきれいな湿地帯に自生する植物。
大田原エリアでは、北金丸とふれあいの丘で、例年2月中旬から3月初旬に開花するとのこと。
ふれあいの丘のざぜん草の情報は少なかったので、北金丸の方に行ってみることにしました。
しかし、時は既に3月中旬。
半ばあきらめ気味で、散策に出かけました。
ざぜん草の群落地の駐車場に到着してみると、思ったより普通の駐車場でした。
私の予想では、未舗装のただの広場でした。
自然観察地の駐車場は、だいたいそんなところが多いものです。
中に踏み入ってみると、そこは誰かの家の庭のようでした。
2023年2月1日付けの下野新聞Web版の記事より
約1400平方メートルある群生地には現在、10株前後が開花しており、2月1日から無料で一般公開される。
この日は「北金丸ザゼン草を守る会」の新江俊弘(あらえとしひろ)会長(69)や群生地を管理する林田恬(はやしだしずか)さん(70)が、
訪れた人に配る案内文の配布準備などを進めた。
こういった地域の自然を守る活動は、そこに住む地域の方々に支えられています。
本当にありがたいことと思います。
昨今、足元の小さな自然などは、見捨てられる傾向があるように感じています。
希少な植物だと知らなければ、踏みつけられてしまうような小さな生命なのです。
ざぜん草の群生地は、とても小さなエリアでした。
一周5分くらいで回れてしまう、ロータリー状の木道になっていました。
そばを小川が流れていて、とてもすがすがしく透明な水でした。
近くの川底からの伏流水なのでしょうか。
この用水のような小川の美しさには、気分が盛り上がりました。
そして目的のざぜん草を探していると、ありました!
私の観察では、2株咲いていました。
ダメかもと思っていたので、とても嬉しかった。
そのうちの1株は形も整っていて、木道から近く撮影可能だったのは幸運でした。
私がこの植物に惹かれたのは、不思議な形と血液のような濃厚な色合いにありました。
実際に観察を終えて、興味を持ったので調べてみました。
ドーム状の覆いは、つぼみを包んでいた葉の部分だったのです。
そして、ドーム状の空間は開花の時期には、熱を持つとのこと。
更にその空間は、20度を保ち続けるというのです。
また、肉が腐ったような悪臭を放ち、この時期に活動しているハエの仲間をおびき寄せる仕掛けもあったのでした。
(Webサイト:HiroKen花さんぽから加筆)
見た目で気に入ったざぜん草に、意味深い能力があったと思うと、なぜか嬉しく感じました。
大田原エリアの田園地帯に、わずかに残る一風変わった植物”ざぜん草”。
那須岳の見渡すこの土地に、どうか残り続けてほしい。
そして、ハエの仲間だけではなく、自然愛好家をいつまでも引き付けてほしいなと思いました。